愛媛県の南部、鬼北町と高知県四万十市に隣接し、町土の84%が森林である「森の国」松野町。
そんな松野町にある奥内(おくうち)の棚田は、日本の棚田百選、また国の重要文化的景観に選定されています。
松野町の町から車でおよそ20分。四万十川源流域の500~600メートルもの急峻な山並みに囲まれた場所に、遊鶴羽(ゆずりは)、下組(しもぐみ)、本谷(ほんたに)、榎谷(えのきだに)の4つの集落から成る美しい棚田が広がります。
山の斜面に沿って階段のように続く棚田は、先人が山を切り開き、一つ一つ石を積み上げることで形成されました。
一帯は自然の地形を生かした構造となっており、田は傾斜の緩い谷部に、宅地は緩やかな尾根に沿って作られています。棚田を中心に、自然と調和した農山村の景観が見られます。
自然豊かな松野町の中でも天然生林の割合が高く、ヒメアカネやアキアカネなどの赤とんぼ類を含む、多様な生態系が育まれる場所となっています。
源平合戦の後に平家の落人が隠れ住み、棚田を広げたという伝説も残っています。
今でも棚田では米作りが行われており、収穫の時期には一面に広がる稲の姿を、11月にはコスモスが咲き乱れる様子を見ることができます。